油圧作動油の選択
作動油は油圧装置において、動力の伝達と潤滑の二つの働きをおこなう
重要な要素になりますから、作動油メーカとも相談され、慎重に選択して
ください。このとき、油圧ポンプ、モータの機能および耐久性能に適合する
作動油を基準として選んでいただければ、各種制御弁にたいしては、ほと
んど問題ありません。ただし、一部の制御弁には水・グリコール系作動油
では使用できないものもありますので、注意してください。
作動油の粘度
粘度は流体の流動抵抗値を支配するもので、油圧システムの性能を決
める重要な要因となるものです。使用する油圧機器のしゅう動部分に十分
なシール効果と潤滑性を保証し、キャビテーションによる機器部品のエロ
ージョンや騒音・振動の発生を防ぐために、適正な粘度範囲で使用するこ
とが重要です。このため、ご使用になるポンプ、モータの種類に合わせて、
右表の条件を満たす作動油を選択してください。
● 各粘度等級(VG)の40℃における粘度範囲を右に示します。
● SAE10相当油はVG32とVG46の中間にあり、SAE20-20WはほぼVG68に
相当します。
● 各粘度等級(VG)の上記粘度範囲と温度の関係を右表に示します。
● 適正粘度範囲と推奨作動油粘度等級の線図が前ページにありますので
合わせてご参照ください。
● 車両用としてご使用になる場合は、別途ご相談ください。
作動油としての条件
油圧装置が満足に運転されるためには、作動油の性質として
● 潤滑性、耐摩耗性が良いこと
● 使用温度範囲で適正な粘度があり、高・低温で変質しにくいこと
● 酸化安定性、せん断安定性が良いこと
● 防錆性があること
● 油圧機器、配管、継手類に使用される金属、エラストマ、塗料と反応しな
いこと
● 消泡性が良いこと
● 水分などの混入時に分離性、抗乳化性が良いことを備えていることが必
要です。
作動油の分類
作動油として使用されるものを分類すると下のようになります。
● 作動油 …① 石油系作動油 → ・耐摩耗性作動油
…② 合成系作動油 → ・りん酸エステル系作動油
(難燃性作動油)
→ ・脂肪酸エステル系作動油
…③ 含水系作動油 → ・水・グリコール系作動油
(難燃性作動油)
→ ・油中水形作動油(W/O形エマルジョン)
→ ・水中油形作動油(O/W形エマルジョン)
石油系作動油①
次の石油系作動油を推奨します。
● 耐摩耗性作動油
耐摩耗性を高める十分な量の添加剤を含んだ作動油で、ASTM-D2882
のような摩耗試験に基づいて改良された作動油です。
難燃性作動油②③
合成系または含水系難燃性作動油は、火災の危険がある場所で油圧装置
が使われる場合に使用されますが、これらの作動油は石油系作動油と比べ
● 滑性が劣る場合が多い
● 金属材料やエラストマにたいして不適合なものが多い
● 種々の混合物質によってスラッジを発生したり、作動油自体の分離・変
質がおこりやすい
● 含水系作動油は水の沸騰によるキャビテーションを発生しやすく、また
電気分解による金属腐食をおこしやすいといった欠点がありますので、
ご使用にあたって十分に注意してください。
1. 潤滑性
石油系作動油を使用する場合を1とすると、各難燃性作動油を使う場合
の油圧機器の寿命は、経験的に右表のようになります。
2. 使用材料との適合性
シール材、金属、塗料との適合性は右表のとおりです。
3. 使用温度限界
難燃性作動油の寿命を長く維持するためには、一般に右記の使用温度
限界がありますので温度管理に注意してください。とくに含水系作動油
の場合には、作動油メーカとご相談の上、運転中の油温の管理、および
性状の定期的点検をお奨めします。
4. 難燃性作動油の保守
難燃性作動油を使用する場合には、石油系作動油と異なった特性があ
りますので、作動油メーカとご相談の上、定期的点検をお奨めします。
一般的な注意事項を下に列記します。
● 油タンク、配管、フィルタ等の材料、内面塗装は、作動油との適合性に
十分注意して選定すること。
● 作動油の比重が石油系より大きいので、ポンプ吸込み抵抗など流動抵
抗の増加に注意すること。
● 作動油の性質としてスラッジを発生しやすいので、フィルタの目詰まりに
注意すること。
● 新油との交換、または石油系から難燃性作動油に交換する際には、十
分にフラッシングをおこない、両者の混合を避けること。
● 消泡性が石油系と比べて劣るので、油タンクは容積を大きめにし、ポン
プが気泡を吸い込まない構造にすること。
● 合成系作動油の場合、クーラからの水漏れ、油タンク内の気相壁に生
ずる水蒸気の凝縮水などによる水分の混入で金属腐食をおこすことがあ
るので注意すること。
● 含水系作動油の場合、運転中の油温に十分注意し、また定期的に含水
率の点検をおこなって不足水分(蒸留水)を補給すること。また貯蔵時の
凍結、融解の繰返しで分離するものもあるので、注意すること。
作動油の交換基準
油圧システムの機能を長期間維持するために、つねに作動油の性状と清
度を管理することが必要です。すなわち定期的な点検・分析を作動油メー
カに依頼して記録しておくこと、そして下記の性状値を限界として交換する
ことをお奨めします。
● 作動油性状による交換基準
*白濁状態の作動油は多量の水分を含んでいるので、ただちに交換
してください。
● 推奨清浄度と使用フィルタの推奨ろ過性能
*ISOコードによる清浄度の表示は、ISO 4406に準じたコードで、作動油中
の汚染ゴミ粒子の大きさと数によって区分してコード化し、作動油の汚染
状態を示す方法です。
右表の推奨清浄度に示す数値は、それぞれ5μm以上と15 μm以上の
汚染ゴミ粒子の数で決まる清浄度レベルコードを表します。すなわち
19/15とは5μm以上の汚染ゴミ粒子数がレベル19、そして15μm以上の
粒子数がレベル15であることを示しています。
右表の清浄度レベルコードは、1mL中に含まれる汚染ゴミ粒子数にたい
して、次のように区分されています。
作動油の分類と特徴 | ||||||
性状と種類 | 石油系 | りん酸エステル系 | 脂肪酸エステル系 | 水・グリコール系 | W/O形エマルジョン | O/W形エマルジョン |
比重(15/4℃) | 0.87 | 1.1~1.3 | 0.90 | 1.04~1.1 | 0.93 | 1.0 |
粘度 | 小~非常に大 | 小~大 | 中 | 小~大 | 小 | 小 |
粘度指数(VI) | 70~150 | 低~高 30~180 |
高い | 高い140~170 | 高い130~170 | 非常に高い |
蒸気圧 | 小 | 小 | 小 | 大 | 大 | 大 |
石油系と混合 | - | 3% | 可 | 3% | 可 | 不可 |
使用材料との適合性 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
りん酸 エステル系 |
脂肪酸 エステル系 |
水・グリコール系 | W/O形 エマルジョン |
O/W形 エマルジョン |
||
シール材 | 適合可能 | ふっ素ゴム シリコンゴム ブチルゴム エチレンプロピレンゴム ふっ素樹脂 革 |
ニトリルゴム ふっ素ゴム シリコンゴム エチレンプロピレンゴム ウレタンゴム ふっ素樹脂 クロロプレン 革 |
ニトリルゴム ふっ素ゴム ブチルゴム エチレンプロピレンゴム ふっ素樹脂 クロロプレン |
ニトリルゴム クロロプレン ふっ素樹脂 ふっ素ゴム |
|
シール材 | 不適合 | ニトリルゴム ウレタンゴム クロロプレン |
ブチルゴム |
シリコンゴム ウレタンゴム 革 |
シリコンゴム ブチルゴム エチレンプロピレンゴム ウレタンゴム 革 |
|
不適合の金属 | アルミニウム |
亜鉛 カドミウム アルミニウム マグネシウム |
亜鉛 カドミウム 銅 |
アルミニウム |
||
塗料 | 塗装をしないか、または塗料メーカとご相談のうえ、適合するエポキシ系また、はポリウレタン系樹脂塗料を使用してください。 |
適正使用温度範囲 | |||||
粘度等級 | 基準粘度 mm²/s @40℃ |
基準粘度の作動油の限界温度 ℃ | |||
運転時 | 起動時(最低温度) | ||||
54~13 | 860mm²/s | 220mm²/s | 110mm²/s | ||
VG32 | 32 | 27~62 | -12 | 6 | 14 |
VG46 | 46 | 34~71 | -6 | 12 | 22 |
VG68 | 68 | 42~81 | 0 | 19 | 29 |
Hydran Fluid series is a synthetic high performance hydraulic fluid for life-time application
in modern vehicle aggregates. It is suitable for all extreme conditions
and guarantees full performance from -45°C to over 140°C system temperature.
Hydran Fluid series is especially designed for hydraulics in the automotive industry with highest technical requirements. Due to its excellent features it is used in following devices (extract): power steering, level control, shock absorber, hydro-pneumatic suspension, stability- and traction control, hydraulics for convertible tops, central lock systems.
Hydran | 10S | 15S | 22S | 26S | 32S | 35R | |
密度 15℃g/㎝³ |
0.8285 | 0.8525 | 0.8305 | 0.8425 | 0.8660 | ||
引火点 COC ℃ |
165 | 164 | 162 | 164 | 198 | ||
動粘度 | 40℃ | 19.22 | 19.82 | 22.70 | 25.25 | 33.68 | |
100℃ | 6.050 | 7.015 | 7.103 | 7.820 | 7.953 | ||
粘度指数 | 308 | 310 | 293 | 295 | 193 | ||
流動点 ℃ | <-50℃ | <-50℃ | <-50℃ | <-50℃ | <-45℃ | ||
外観・色 | クリアー緑 | クリアー緑 | クリアー茶 | クリアー茶 | クリアー赤 |
作動油性状による交換基準 | |
---|---|
点検項目 | 交換限界値 |
粘度変化(@40 ℃) | ±10 % |
中和価 mg KOH/g | 1.0(耐摩耗性作動油) |
沈殿物(重量%) | 0.1 |
水分(重量%) | 0.05 |
ノルマルペンタン不溶分と ベンゼン不溶分の差(重量%) |
0.02 |
清浄度 | 下表参照 |
作動油の適正粘度 | |||
機器の種類 | 粘度等級 | 粘度範囲 mm²/s | |
運転時 | 起動時(最高) | ||
ベーンポンプ(V20,V30) | VG32-68 | 13~54 | 220 |
ピストンポンプ ベーンポンプ(V20,V30を除く) ベーンモータ(MHTを除く) 歯車モータ |
860 | ||
ベーンモータ(MHT) | 110 |
動粘度と粘度等級(VG) | ||||||||||||||||||||||||
動粘度 mm²/s | ||||||||||||||||||||||||
15 20 30 40 50 60 70 80 90 100 135 150 | ||||||||||||||||||||||||
VG15 | VG22 | VG32 | VG46 | VG68 | VG100 | VG150 | ||||||||||||||||||
ISO粘度等級(VG級) |
作動油基油の潤滑特性 | ||||
---|---|---|---|---|
りん酸 エステル系 |
脂肪酸 エステル系 |
水・グリコール系 | W/O形 エマルジョン |
O/W形 エマルジョン |
0.75~1 | 0.75~1 | 0.5~0.7 | 0.7~0.8 | 0.4~0.6 |
使用温度限界 | |||||
---|---|---|---|---|---|
分 類 | りん酸 エステル系 |
脂肪酸 エステル系 |
水・ グリコール系 |
W/O形 エマルジョン |
O/W形 エマルジョン |
低温~高温 使用限界 ℃ |
-20~100 | -5~100 | -30~50 | 0~50 | 0~50 |
推奨清浄度と使用フィルタの推奨ろ過性能 | ||
---|---|---|
ISOコード による 推奨清浄度 |
油圧システムの種類 | フィルタの 推奨ろ過性能 (絶対ろ過粒度) μm |
19/15 | ~15 MPaの圧力で使用される 一般油圧システム |
25 |
18/14 | 15~25 MPaの圧力で使用される 一般産業機械、車両機械 油圧システム |
10~25 |
16/13 | 25 MPa以上の圧力で使用される 高圧システム |
5~10 |
15/11 | 航空機、精密工作機械などのサーボ弁を 含む高圧あるいは高信頼性システム |
5以下 |
清浄度レベルコードと粒子数 | |
---|---|
清浄度レベル | 粒子数 (1 mL中に含まれる最大数) |
19 | 5000 |
18 | 2500 |
17 | 1300 |
16 | 640 |
15 | 320 |
14 | 160 |
13 | 80 |
11 | 20 |